ラムレーズン修行の果てに
自営業において、モチベーションを維持するには目の前に“ニンジン”をぶら下げるのがいい。「あと30分頑張ったらおやつ」――これが最も手っ取り早い方法だ。
過日、レーズンをラム酒に浸けた。
初めてのラムレーズン作りということで、瓶の煮沸消毒からレーズンの乾燥まで、インターネットで調べたレシピの通りに進めた。
「雑菌をレーズンに付着させることなかれ」という言いつけを達成すべく、手袋も着用。横着選手権県代表候補のわたしからすると、とんでもない出来事である。
こうして冷蔵庫で7泊8日過ごしたラムレーズンの開封の儀が、昨日行われた。
最終目標はレーズンバターの製造。酒のつまみにでもできれば最高だ。その前に「味見がてら、ラムレーズンをおやつにしよう」と思った。
滅菌の令を守るべく、瓶の内側に手を触れないよう細心の注意を払い、ラムレーズンを小皿に取り出す。
まずは一粒。すると、ラム酒のアルコール分が口内で暴れだし、火を吹くような刺激が喉を通過した。それは、あとから追いかけてくる繊細な甘味をかき消すほどだった。
要するに、酒の辛味がきつい。
1週間程度では熟成が不十分だったようで、アルコールが激しく自我を主張している。調べてみると、年単位で熟成させたり砂糖を加えたりすると、アルコールが甘味に変わるらしい。
ただ、今のわたしは目の前にあるラムレーズンと向き合わなければならないのだ。皿にこんもりと盛られたレーズンを瓶に戻すと、雑菌が混入してしまうかもしれない。
一粒、また一粒と食べ続けていくと、次第にラム酒が体の中で暴動を起こし、私の理性は議会を解散した。
気が付けば、さらなるアルコールを求めてウイスキーの瓶を開けている。こうして、本日の業務は終了。愉快痛快、たまにはこんな日があってもよいだろう。
おそらく私は、こうやって自分を甘やかさないと働き続けられない人間なのだ。


